2014/06/22   【青桃】つづき

つづきー。
終わらないよー。

書いては、戻ったりしているから、進みが遅い(笑)

とりあえず、投下ー。


*
意外と、というか。
「悩みがなくていいね」なんて棘のある言葉に傷ついている人が多いよね。
それは羨ましいだけなんだよ、と言ってあげても、傷ついた心は、そう簡単には治らないよ。
言葉を発する時には、それが相手を傷つけないか、気を付けないとね。
笑っているからって、傷ついてないなんて、幼稚な事、考える人、ほんとはいないよね?
誰しも悩みはあるし、誰しも幸せでもある。
羨ましいと思ったら、素直に羨ましいね。しあわせだね、と伝える方が、大人だよ。
ということを、「この恋が、脆く儚いものだとしても。【黄黒】」を書いた後でも、実感している今日この頃。

自分が言われて嫌なことは、人にも言わない事!
これ、最低限のルール!!

と、思うわたしは甘いのかな?

*




>>   青桃。


胸を掻き毟るように。
頭を掻き乱して。
苦しんで苦しんで。
――――――声にも出せずに慟哭している。
そんな姿は誰にも見せたくない筈だ。

(絶対、気付かれてはいけない。)

そろり、と音を立てないように後退る。
だが、こんな時にも、青峰は馬鹿だ。
どうしようもないほど間抜けで、取り返しがつけられない程の阿呆だ。

ここまで、音も立てずに忍んで来れたのに。
誰にも気づかれずに、勝手知ったる幼馴染の家に入り込んで来たというのに。


――――――『ドサっ』。


震えた足が、萎えさせた。
自慢の足腰の筈なのに、役に立たない。
寝静まった真夜中に、間抜けにも尻餅をついた音だけが響いた。


「だ・・だいぢゃん゛・・」


真っ赤に泣きはらした瞳で。
散々に泣いていたと分かる枯れ果てた声で。
茫然と呟く声が、空気を揺らした。

「あー・・。えっと・・・その・・よぉ・・・?」

間抜けたツラを晒して、青峰が言えたのはただそれだけだ。
右に左へと視線を彷徨わせた後、尻餅をついたまま、ぎこちなく片手を上げる。
青峰が、桃井の慟哭を見てしまった事は、ばればれだった事だろう。
それでも、桃井は。

――――――さつきは、いつも通りだった。

「な゛、な゛に、やっているのよ゛!? こんな真夜中に゛!! 女゛の子の部屋で!!!」

いつも通りに、元気な振りして。
真夜中だから声は潜めているが、がらがらの声で、ぷんすかと勢いよく怒って見せた。
大きく足を振って、青峰を蹴りだそうともする。
それが虚勢なのは分かる。
だが、桃井がその話題に触れられたくないのも、嫌と言う程に分かる。
青峰自身にも覚えがある事だ。
泣きだしたいほどに苦しくても、その事で誰にも、何も言って欲しくはない。
触れられたくない。構って欲しくない。
どうせ・・という思いもある。
プライドもある。
所詮は他人だ。
・・・それが例え、幼馴染だとしても。

「女の子? はんっ。ただのデカぱいだろー、おまえは。もっと大きくするの手伝ってやろうと思ってさ」

これはただのは言い訳だ。
例え、最初の目的がそれだとしても。
そして、プライドだなんだと思いやってやるふりをしながら。
逃げたのだ。
ただ泣き濡れるさつきから。
どうしてよいか分からないから。
――――――俺のせいじゃないかと気付いたから。

桃井が泣くのは、大概が青峰のせいだ。
それは自意識過剰でも何でもない。

青峰自身が加害者の時もある。
桃井に虫を投げつけたり。苛めたり。からかったり。

だが、回りまわって、青峰のせいで傷つけられてきた事もある。
傍若無人で、物の言い方も知らぬ俺のせいで、同年代や年上の女子や男子に苛められたり、やっかまれたり。
その中には純粋に俺の事が気に食わない連中もいただろう。
だが、俺に好意を感じた上で、感情が拗れて、さつきに八つ当たりをしていた者もいたのだろう。

――――――そんな時も、俺は何もしなかった。

分かっている時は、助けてやれた。
目の前での出来事なら、ちょっと一睨みすれば、大抵の者は、すごすごと逃げて行った。
だが、影に回られれば、何もできなかった。
影に回れば、より陰湿になるその手の事に、俺は疎かったし、打つ手もなかった。
さつきからも釘を刺された。

“もうっ。大ちゃん、引っ掻き回さないでよっ”

桃井が言うには、当人が出ない方が、事態が沈静化するのが早いそうだ。
それに、この手の事は、情報戦で、得意分野との事。
ここではこうして、あの場面ではこういうパターンで、などと色々と言ってきたが、青峰には、何を言っているのがさっぱり分からなかった。
ならば、手を出さない方がいいのだろう。
事実、青峰が一切、関わらなくなってから、一気に沈静化した。
そして、分からないなりに、一つ分かった事がある。

“ほんとうは、みんな。わたしを苛めたいわけじゃないんだよ”

俺の知らないところで泣いてたくせに。
まだ目元が赤いくせに。
さつきは、はにかむように笑った。
それはどこか嬉しそうで。・・・泣いていた癖に。
笑った顔は、大丈夫だ、と思えた。


――――――でも、今回は違う。


心が壊れてしまいそうな痛々しさを感じた。
怒って、「もうっ。大ちゃんはっっ」と笑っているのに、悲痛に見える。
それでも、俺は、見ないふりをした。
もう震えの止まった足で、大股に部屋を横切り、箪笥からタオルを勝手に引出し、さつきの頭に投げつけ、ぐしゃぐしゃと掻き乱す。
いつもなら、髪をちょっと乱しただけで、怒って蹴り上げてくるのに、手の中のには微かな震えが伝わってくるのみだ。
嗚咽をこらえているのが分かる。

「じゃあなっ」

そんなさつきを残して、俺は部屋を出て行ったのだ。
微かに、指が縋るように、動いたのに気付いたのに、だ。
なぜなら・・・――――――怖かったのだ。

今回の件の加害者は、どう考えても俺なのだ。
後日、「その・・おばさん、さつきは・・?」と問うた言葉に、桃井の母親は、痛ましそうに俺を見てきた。
その事からも明らかだろう。
そして、「少し、眠れないみたいね」と。
それがいつからで、どのくらいの深みなのかは分からない。
直接の危害を加えたわけではない。
だが、心を抉っているのは、俺なのだ。
それでも、俺にもどうしようもない。
・・・俺が、どうにかなるしかない。
だが、この発散させることのできない鬱屈した思いは、苛々は、どんどんと澱のように降り積もっていく。


“俺に勝てるのは俺だけだ”


そんな捻れた宣言をしたのに、俺は既に『俺』に負けていた。



(さつき――――――。)


どうして、さつきは俺を見捨てないのか。
どうして、そうやって笑っていられるのか。


次の日。
さつきは、俺に泣き顔を見られた事など忘れたように、笑っていた。
いつものように颯爽と立ち回り、鮮やかな笑みで、周りを魅了している。

この時点では、もはや、桃井を苛めようというものは、いなかった。
ミス・帝光中という華々しい輝きは人の目を集め、隙をつくりはしない。
桃井自身も、何をしたのだか、憧れを集めつつも、一部の人には畏れられていた。
にっこりと笑う、その笑顔が怖いのだとも言われていた。

――――――俺には、眩しいばかりだけどな。

初めて、さつきを眩しいと感じた。
あの、綺麗とは言えない慟哭を思い出しては、胸を騒がせた。

あれだけは、俺のものだ。
あの泣き顔は、俺しかしらない。


そんな事を思いつつも、青峰は、変わることができなかった。
気になりつつも、桃井を振り返る勇気を持てなかった。
そんな青峰なのに、桃井は、高校までも一緒にすると言う。


(見捨てればいいのに。)


見捨てたって、誰も責めはしない。
そうすれば、楽になるというのに。
既に、相棒にも見限れられた俺だ。
裏切ったのは青峰かも知れないが。

砂のようにさらさらと心から零れていくものを止めようがない。
脆くて、儚くて。
留めようとしても、崩れてしまう。
掴もうとしては、諦めてしまう。

それでも、桃井が見捨てないから。
自分でも見捨ててしまう青峰を見限らないから。


それが青峰の、唯一にして最後の――――――絶対の砦だった。











そして。
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by ak_yuma | 2014-06-22 22:09 | SSあり

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