暁の見えるところ21-1

21話のプロット終了。
でも、進まないから、こっちにちまっとアップ。

気長にお待ちください。








21.

「ユフィ! ――――――そ、そのだな・・」
「・・・はい」


――――――このところ。
こんなことが、たまにある。
常に凛とした姉であるコーネリアが、妹であるユーフェミアに声を掛けては言い淀む。
「閃光のマリアンヌ」のような騎士たらんと常に自身を律し、他者にもそうあれ、と望むだけの厳しさを孕んでいた彼女がである。
何かを言いたげに――――――問いだけに口を開いては、言い淀み、逡巡しては、何も問わずに口を噤む。
そうして、その間、口よりも・・・瞳が、握りこまれた拳が・・・彷徨い、揺れ、雄弁に心を語る。
溜め息のような深呼吸が一つ為され、瞬きする一瞬だけ瞳を思い悩むように閉じて、ここではないどこかへと区切りをつけ、ユーフェミアを見詰める。
その瞳は、哀しみを知り、愛しさやそれに類する切なさを湛え、慈しみに溢れている。

「お姉さま?」
「いや、なんでもない。・・・そう、これをだな。お前に・・・」

ゆるく首を振り、バスケットを差し出してくる。
ユーフェミアも、声を掛けられてからは、気になっていたものだ。
既に、だいたいのところは分かってはいる。
以前にも、渡されたことがあるからだ。

そうして、――――――このところ。
政庁の警備が、緩んでいる。
いや、外敵からの侵入には、相変わらず蟻の入れる隙間さえないほどに厳しいから、緩んでいるのとは違うのだろう。
外からではなく、内から出るものに緩いのだ。
騎兵の数が減ったわけでもない。警備体制に穴があるわけでもない。
交代要員も、時間も、以前と比べて、どう違うと言うものでもない。
ただ、ユーフェミアが、お忍びで・・・しかも護衛もなく、誰にも知られずにこっそりと、外に出たいと望んだ時に、間隙を見つけやすいのだ。
その脱出後に、付けられている様子もない。
念のための用心としては、尾行を撒く手段を幾つも講じてはいるが、それに引っ掛かるものが一度としてない。
ユーフェミアを好きにさせてくれている。――――――それが誰の意志によるものなのか。分からぬほど愚鈍でもないつもりだ。

「これは・・・?」

手渡されたバスケットの中には、色とりどりの香ばしい焼き菓子の他に、小さな箱が2つ。
綺麗に包装されたその小箱は、形といい大きさといい重さといい、同じものに見える。
コーネリアに促され、一つを開けてみれば。

「その、似合うと思ってな」

――――――それは誰に?
それは繊細な白いレースに小花があしらわれた可憐なブーケのブローチ。
帽子につけてもいいし、襟元にも、胸元にも飾ってもいい。
ユーフェミアにも似合うが、どちらかと言えば・・・。
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by ak_yuma | 2015-11-08 18:27 | SSあり

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