2006年 05月 06日
2006/05/06 散華おまけ
嬉しい時、悲しい時。
何もなくとも口にしていたのに。
それはいつからだろうか。
ボクを見ても何も言わない。
それは不自然なほどに。
ただ時々、瞳に陰りを落とす。
ボクを見つめ、苦しげに、その向こうの何かを見透かそうとする。
だけどそれも一瞬の事。
次の瞬間には、何もなかったかのように見つめている。
それはいつからだろう。
-----いつから?
それは彼のようでいて彼ではない。
それはボクの知らない彼。
だけどボクはそれでも飛ぶ。
光を反射しきらめく羽を翻し、彼の元へ。
例え、彼が彼じゃなくとも。
彼が呼ぶ限り。
それは太古から決まっていた約束事のように。
ボクを構成する一つ一つのカケラに埋め込まれた使命のように。
ボクの鼓動は彼の声を聞いただけで高鳴る。
逆らえはしない。
初めからボクのCPUは彼の為にあるのだから。
「-----トリィ!」
ほら、それだけで鼓動が高鳴る。
彼がボクを呼ぶ。
-----それは『彼』の鼓動。
by ak_yuma
| 2006-05-06 10:44
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